旧東海道本線・米原~彦根間には、昭和31年(1956)11月19日に電化されるまで、短いトンネルがあった。仏生山トンネル(山名は「物生山」・単線トンネルとしての完成は明治23年)という。鉄路は、現在のJR琵琶湖線より山側、滋賀県東北部浄化センターの敷地内を走っていた。当初、切り通しでトンネルではなかったが、その後、わざわざ煉瓦を積んでトンネルにしたらしい。マニアの間では有名なトンネルで、『日本の鉄道ことはじめ』沢和哉著(1996年)「第2章鉄道建設うらばなし」で、「龍神が怒って運転を妨害 ー仏生山トンネルものがたり」として、紹介している。
仏生山には、龍神が住んでいて、竹生島の弁才天のもとへ通う道筋となっていた。ところが、鉄道が仏生山の中央を切り通し、怒った龍神が、木や土砂を線路上に落下させて、鉄道の運行を妨害した。故に、わざわざ煉瓦を積んでトンネルにした。
仏生山トンネルは、緑に覆われ今も存在している。米原から彦根に向かう時、少し気をつけていると、美しい煉瓦のアーチが二つあることに気づく。実際にこのトンネルをリアルに経験し、覚えている人も多いに違いない。